本研究では原始的被子植物と裸子植物の胚珠について、その形態制御遺伝子の発現と形態の関連を解明し、相互に比較することにより胚珠の系統進化過程を明らかにする事を目的としている。さらにシダ植物における相同遺伝子を探索することにより胚珠自体の起源の解明も合わせて試みる。平成9年度は裸子植物のイチョウ、ソテツ、シダ植物のミズワラビ、クラマゴケを材料としてLEAFY相同遺伝子とMADS遺伝子のRT-PCR法によるクローニングを行った。生殖器官から抽出した全RNAからRT-PCR法によって増幅を試みた結果、LEAFY遺伝子については両種ともに2個の異なる配列を有するクローンが得られた。これまで配列が決定された他のLEAFY相同相同遺伝子とともに系統樹を作成した結果、この2種のクローンはマツから得られている2種類のLEAFY相同遺伝子とクラスターを作り、裸子植物においてLEAFY相同遺伝子が2個存在していることを示している。被子植物では通常1種類の遺伝子しか存在しない。ミズワラビからは1種類のクローンが得られた。MADS遺伝子ではイチョウで9種類、ソテツで1種類をクローニング済みであり、現在、発現の解析を行っている。クラマゴケからは1個のMADS遺伝子をクローニングした。この遺伝子は坦根体、根を除く他の器官で広く発現していることが示唆された。
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