変異研究の対象種の分布生息が予想される海域を、詳しく調査・探索することができた。場所によっては、期待した時期に期待しただけの対象を首尾よく見つけだすことができず、小型ミノウミウシでは個体群サイズの年変動もかなり大きいことが示唆され、オポチュニスティックな種の特性をより明らかにする結果となった。まとまった数の得られた種については、電気泳動法を用いる生化学的な資料として調整し、現在分析を進めている。 解剖による形態学的な検討では、大きな進展を見ることができた。とくに生殖器系の微細構造については、生時の行動の差異を生み出すような微妙な違いまで明らかにすることが出来、そのことによって当該種の変異をめぐる論議に決着をつけることができた。さらに、その結果、従来は生殖器系の構造によって分けられていた高次分類群の見直しを行うことになった。また、別の例では、環北極分布をしている種について、食性をはじめ重要な生物学的な知見を得、食性と体色の問題に迫る基礎データを提示することが出来た。 上記の他に採集調査の途上、興味深い観察を得た。ある個体群では最大サイズに至るまですべての個体が性成熟していないことを見いだした。短い繁殖サイクルをもつ種にしては、この現象は大変特異なものと考えられる。
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