後鰓類における体の色模様には、しばしば変異が見られる。わずかな色模様の違いをもとに研究が進められても、わずかとはいえ解剖所見から明瞭な境界をなす形質の差が認められることによって、種の問題が解決する場合が多い。ところが、一方で、明らかな色模様差があるにもかかわらず、内部形態にはっきりしたギャップが認められない場合に、問題が先送りされることもある。このような問題を含む種について、本年度はいくつもの解決が得られたが、中でもヨツスジミノウミウシ科の種で、背側突起の配列ときわめて特徴的な生殖器の形態から所属とされているアカエラミノウミウシ属の種の検討をした結果、長年問題とされてきた「普通種」が、実はどれもこれまでに記載されたものと明らかに異なっていることが突き止められた。つまり、いずれもが新タクソンを与えられた。そして、相模湾海域からは、これから将来、さらなる別種が発見されることを予言した。驚くべきことに、早くも、伊豆半島東岸からおそらく未記載種と考えられる同属種が発見され、現在、その記載も開始した。なお、ポエシロゴニーの生化学的な検討のために行ってきた調査採集については、一方の繁殖タイプについては必要数の検体をそろえることができたが、もう一方についてはまだ十分にそろえることができず、さらに収集の努力を行っている。一方のタイプについては長期系代飼育にも成功し、条件による変化も明らかになりつつある。
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