本年度は中部山岳の数地点、北海道2地点から、カラフトメンマ・イワカゲワラビの採集を行なった。上記2種は北海道と中部山岳に隔離分布するシダ植物の代表種である。カラフトメンマは大きさも胞子のう群をつける成熟率も両地でほとんど差がみられない。後者のイワカゲワラビは若干中部山岳地域のもののほうが大きいことと胞子のう群をつける葉数の比率が高そうである。 いずれも来年度の解析を待つ必要がある。昨年にひきつづく野外調査の結果、同種の隔離分布が再確認でき、資料蓄積ができたことになる。一方で予想外の発見ができた。それは両種の形状はほとんど同じであるが、それをとりまく森林構造の違いである。少なくとも優古木がエゾマツ・オオシラビソと異なること、ミズナラ・コナラと異なること。また林床植物構成も両地では大いに異なる事実である。これは林床植物であるシダが気候変動のもとで生残することと、その他の森林構成メンバーの入れかわりには大きな違いが予想できることである。来年度のとりまとめを待って次の新しい隔離分布シダととりまく環境変化のプロジェクトを準備する予定である。
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