分子系統解析の成果が続々と発表され、その結果従来の分類システムに大きな変革を求めつつある。そこでこの研究課題では、それらの分子系統解析の結果を、形態形質、進化上保存性の高い生殖形質をもとに、妥当であるかどうか、特にキク目の植物群を対象に検討した。さらに近年の急速な情報の変化に鑑み、キク目植物群の他、トウダイグサ科のCrotonoideaeと、その中に含まれると考えられていたハツバキ連、分類学的所属の不明であったSetchellanthus、マダガスカルから再発見されたTakhtajania(シキミモドキ科)なども研究に加えた。 研究結果は以下のようにまとめられる。Crotonoideaeの中の6属(Adenocline他)は他の属と異なり、維管束をもたない薄い内珠皮をもち、外群との比較の結果、進化の基部に位置する群であることが示唆され、この結果は分子系統解析の結果と一致した。またハツバキ連は、その特徴のうちfibrous exotegmen、endothelium、厚い内珠皮を持つという点から、コカノキ科やヒルギ科などと一致し、分子系統解析の結果とも一致した。Setchellanthusはメキシコ固有属で、種子の構造が分子系統解析の結果と一致して、core Capparalesの基部に位置する科として結論された。ミツガシワ科(キク目)の珠皮の発生と構造を調べ、その厚い珠皮はキク科、クサトベラ科、カリケラ科と共通の祖先で獲得されたものと推定した。アルゴフィルム科のArgophyllumとCorokiaは、エスカロニア科あるいはミズキ科に入れられてきたが、1珠皮性のtenuinucellate ovule、endothelium、haustorial endospermをもつなどの点でキク目に一致することが明らかになった。しかし、それらの正確な類縁関係は、Escalloniaの研究が必要であることが示唆された。
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