研究概要 |
日本各地及びマレーシアからコケ植物ツノゴケ類4種,15標本を採集した。野外標本を光学顕微鏡で観察した限りでは,ツノゴケ類の葉状体内に共生生物を包みこむcavityが形成されず、細胞間隙に共生生物がコロニーを形成していることが明らかになった。ツノゴケ類の共生生物はシアノバクテリアのNoatoc sphaericumの他に別種のNostoc2種も共生していることが明らかになった。種の分類学的見当は現在進行中である。葉状体内のNostocは,培養した藻体に比較して多数のheterocystを持っていることが明らかになった。これは,heterocystによる空中窒素の固定と関係あると考えられる。ツノゴケ類4種について、胞子をKnop液体培地で培養することによって、symboint-freeの無菌葉状体を得ることに成功した。これらの葉状体は,KnopあるいはBBM寒天平板上で順調に増殖したが,一部の種では硝酸態窒素が利用できず,倍地のpH低下のため増殖が停止するものがあった。これは窒素源をアンモニア態窒素で置き換えることによって解決された。分離されたNostocを培養し,生活史の中のhormogon期を誘導し,Phaeoceros,Megacerosのsymbiont-free葉状体と液体培地で湿らせた濾紙上で混合して,共生の再構築に成功した。また,Oscillatoria,Anabaenopsisの2種についても,再構築を試みたが成功しなかった。 今後は,シアノバクテリアのグループで,さらに多くのNostocなどheterocystを有する種や運動性のある種を用いて再構築を試みると共にhormogonの葉状体への侵入過程,葉状体からのhormogon誘導物質の検索などを行う。
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