研究概要 |
近年、白亜紀の古植物学的発見や分岐分類学の発展および分子系統学の研究成果等により、被子植物の起源と初期進化に関する研究は、急速に展開しつつある。特に、ヨーロッパと北アメリカで白亜紀の地層からbulk sieving techniques法によって、精巧に保存されている花、果実、種子などの被子植物の炭化化石の新発見がなされてきた。これらの白亜紀の被子植物の化石に関する研究は、これまで発見されていた花粉化石と関連づけることによって、地質年代と大陸移動に伴う被子植物始源群の地球規模での地理的拡散の過程を解明する観点からも重要である。 被子植物の炭化化石を立体的に保存されている状態でとりだすことができる白亜紀の特殊な条件下で堆積した地層は世界的にも極めて少なく、これまでにbulk sieving techniques法による古植物学の研究は、スエ-デンと北アメリカ東部(Normapolles地域)の特定の地層に限られていた。研究代表者である高橋は、本年度、ユーラシア大陸東部(Aquilapollenites地域)において、bulk sieving techniques法による被子植物化石の研究の可能性を求めて、白亜紀の地層の探索を行ってきた。その結果、白亜紀の被子植物始源群の花、果実、種子などの化石を含む高い可能性があるいくつかの地層を発見した。その中から双葉層群から高頻度で発見された保存性の良い被子植物の炭化植物化石を実体顕微鏡下でとりだし、走査型電子顕微鏡を用いて形態的特徴の詳細な観察を行った。それぞれの種子の分類学的な位置については、Nymphaeaceae,Hamamelidaceae,等との関連性を検討しつつ、さらに花化石と花粉化石の探索を続けている。
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