研究概要 |
近年、白亜紀の古植物学的発見や分岐分類学の発展および分子系統学の研究成果等により、被子植物の起源と初期進化に関する研究は、急速に展開しつつある。その結果、白亜紀の1億3千万年前から9千万年前のAptianからCenomanianの間に被子植物群の主要な初期進化が開始し、多様な被子植物を生み出す動きが始まり、白亜紀後期のCampanianでは、主要な植物分類群がすでに分化していたことが明らかにされてきた。被子植物の炭化化石を良好に保存されている状態でとりだすことができる白亜紀の特殊な条件下で堆積した地層は世界的に極めて少なく、これまでにbulk sieving法による古植物学の研究は、スエーデンと北アメリカ東部および中央アジアのカザクースタン地方の特定の地層に限られていた。 本研究では、ユーラシア大陸東部において、bulk sieving法による被子植物化石の研究の可能性を求めて、白亜紀の地層の探索を行ってきた。その結果、白亜紀の被子植物始源群の花、果実、種子などの化石を含む高い可能性があるいくつかの地層を発見し、良好な条件下で保存されている被子植物の花、果実、種子、葉、材や、裸子植物のシュート、葉、球果燐、種子を含む上北迫植物化石群(約8千9百万年前)と言う新称を提案した。これらの植物化石群は、クスノキ科、マンサク科、ブナ科、ミズキ目、シクンシ科や、ツツジ目,モクレン科,スイレン目やスギ科との類縁の可能性がある。この研究は、東アジアにおける植物炭化化石に関する最初の本格的な成果であり、被子植物の初期進化を解明するために、今後、上北迫植物化石群の果たす役割は測り知れないことを示唆している。
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