研究概要 |
平成10年度は褐藻Sphacelaria rigidula,黄緑藻Botrydium stoloniferumとTribonemaのセルロース合成酵素複合体(TC)の構造,および渦鞭毛藻Scrippsiella hexapraeingulaと黄金色藻の新種Shizocladiaの細胞外被の構造と成分を調べた. 褐藻Sphacelariaは一列直線状のサブユニットからなるTCをもち,セルロース分子がTCの先端から後端の方向へ側方結合によって結晶化して,リボン状のミクロフィブリルが合成されることが示唆された.黄緑藻Botrydiumはサブユニットが斜め階段状に配列するTCを持つことが初めて明らかになった.それに対して同じ黄緑藻に属するTribonemaのTCはPF面に深く埋没しサブユニット配列を特定できなかったが,Botrydiumと異なるTCを持つと推察された.一方,免疫電顕法によって,褐藻と同様に上記2種を含む黄緑藻と黄金色藻の新種Shizocladiaの細胞壁にアルギン酸が存在することを初めて明らかにした.この事は,褐藻と黄緑藻が共通の起源から派生したことを示唆する.しかし,褐藻のTC(一列直線状)と黄緑藻のTC(斜め階段状)の構造は異なる.来年度,褐藻と黄緑藻のTC構造の起源を明らかにするため特に新種ShizocladiaのTCを探索する. 渦鞭毛藻Scrippsiellaでは,thecal plateにセルロースミクロフィブリルが存在することを電子回折法によって初めて直接証明した.規在,このセルロースミクロフィブリルが合成される特定のstageでTCの探索を継続している.
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