研究概要 |
分布・近縁種との発光行動に比較 イリオモテボタル Rhagophthalmus ohbai(RO)の分布拡散経路や行動進化過程を把握するために、本種の分布状況を調査した。本年度はクメジマボタルの分布が示す大陸とのつながりが大きいと考えられる久米島を集中して調査を実施した結果、本種の分布が確認されなかった。しかし、本種と雌成虫の形態が類似しているクシヒゲボタル Stenocladius(SK)との形態・発光行動の対比を行うとともに、遺伝的背景を対比した。SKはホタル科のなかでは最もROに近い遺伝的背景を示した。クシヒゲボタルは台湾、シンガポール(SS)ほか東南アジアに広く分布しているが、発光部位がROとは異なるが、シンガポール産の種の幼虫のみがROの雌成虫および幼虫と同様に各体節に3個のスポット状発光器を有する共通形質が確認され、ROとの近縁性を示した。ROの雌成虫と同様に腹端と各体節に3個づつ配列された発光器を行動目的によって使い分ける種はタイランド、台湾から確認され、シンガポールのSS、さらにマレー半島のDiplocladon(DP)の1種および中南米産のZaphirus sp.(ZA)に確認された。SS,DPおよびZA.の雄成虫は枝ひげ状または房ひげ状の触角を有し、ROとは明瞭に異なっている。 遺伝的背景の解析結果 西表島、台湾、タイランド産のイリオモテボタル科昆虫およびマレー半島のDP、中南米産のZAの5種について解析を行った結果、西表と台湾のイリオモテボタルが最も近縁で、次いでタイランドのイリオモテボタルとマレー半島のDP、その外側にZAが位置づけられた。DPの位置づけはきわめて興味深く、タイランドのイリオモテボタルと中南米のZaphirusのつながりを強く示唆する結果が得られた。
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