研究課題
基盤研究(C)
二足歩行開始時期から2歳齢までの幼児17名の姿勢とロコモーションの個体発達を主として縦断的に測定した。参考として2歳から5歳までの幼児15名の横断的測定も行った。実験手法としてプラットホーム中に埋め込まれた2台のフォースプレート上の左右別足底力と歩幅・歩調・姿勢安定度の記録、VTRカメラと同期タイマーによるVTR記録、三次元運動解析装置KINEMETRIXの記録、の同時記録により運動と力の解析を行った。これまで得られた結果には以下のようなものがある。1歳児の歩行には、縦断的なデータからも、横断的なデータからも、1歳3、4ヶ月の頃に発達の上で一つの変化点がある。間節の可動域でいえば、股関節においても、膝間節においても歩き始めは小さく、1歳3ヶ月齢ぐらいまで急激には大きくなる。すなわち大きなスライドがとれるようになる。1歳4ヶ月ぐらいから増加量が小さくなり、徐々に成人の可動域へと近づいていく。股関節の左右への動きをみると、歩き始めは成人の倍以上に大きく左右の安定が悪いが、約1歳3ヶ月まで急激に減少し後の変化は緩やかである。立脚期の膝関節上下動は歩き始めでは非常に大きく、膝が充分に体重を支えられないことを示す。約1歳5ヶ月以降ではこのような不安定さは見られなくなる。推進分力の極大値の大きさは体重に換算して比較するとき、歩き始めでは小さい。すなわち体を推進する能力が小さい。この大きさは約1歳3ヶ月までに急激に増大し、その後の増加は緩やかとなる。歩き始めの月齢は0歳11ヶ月から1歳2ヶ月までの変異がある。以上の変化は歩き始めの月齢によらず、むしろ暦年齢によっているように見える。このことは縦断的測定を行っていることによって始めて判明したことである。今後は1歳児縦断的測定データを増すことによって、幼児歩行獲得過程の解明とその個体発達上の意義とを検討する予定である。
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