研究概要 |
1. オホーツク文化の人々には、虫歯がなく歯石が多い。歯石が農耕に関連するかも知れないと述べたことがあるが、海産資源の食料をたくさんとっていると、口腔内がアルカリ性に傾き、歯石が沈着しやすいという。歯の擦り減りは世界の先史時代人すべてで著しいが、オホーツク文化人骨では、ある一定の減り方が見られるようである。 2. 利尻町種屯内遺跡を、筑波大学ならびに東北大学と共同調査した。続縄文時代人骨を1例発見した。 3. 最近、沿海州のポイズマン2遺跡から人骨が出土したが、その報告に見られる形態的特徴は、オホーツク文化の人々の形態に類似するものである。 4. 頭蓋形態小変異を使って、最新の統計学的手法を用いて、近隣の集団とアイヌとの関係を調べた。その結果、アイヌは縄文時代人と結びつき、アムール川流域の集団やバイカル地域の新石器時代人に近く、東南アジアの人々とは、それほど類似をみなかった。 5. 北海道の先史時代人に虫歯が少ないことは、小金井良精がすでに指摘し、最近、大島直行がまとめたところである(大島,1996)。北海道における縄文時代から近世までの成人人骨に見られるエナメル質減形成を調査した。個体別頻度では、縄文時代人骨とアイヌで、7割を越え、続縄文時代人骨とオホーツク文化期人骨では、5割台と低かったが、統計的には有意な差ではなかった。 6. また、1999年にスミソニアンで開かれるアイヌ特別展示のためのカタログ作りの準備を行い、北アジア地域研究会を立教大学ならびに奈良国立文化財研究所で開催した。
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