研究概要 |
1.錯体の合成,磁気特性,光学特性 (RNH_3)_2MX_4で表される層状ペロブスカイト錯体を合成した.有機層として長鎖アルキル(C18:CH_3(CH_2)_<17>-)及びナフタレンを有する有機分子(1-NP(1):1-C_<10>H_7CH_2-,1-NPO(3):1-C_<10>H_7O(CH_2)_3-,1-NPO(4):1-C_<10>H_7(CH_2)_4-)を用いた.無機層にはMとしてMn及びCu,XにはC1を用いた. 2.錯体の磁気特性 M=Cu錯体のR=C18,1-NP(1),1-NPO(3)錯体は強磁性的であるのに対し,R=1-NPO(4)の錯体は常磁性的であった.M=Cu錯体の強磁性発現の起源は協同ヤーンテラー歪みによる軌道配列と関係し,より大きな分子体積をもつR=1-NP(1),1-NPO(3)の錯体ではヤーンテラー歪みが抑えられキュリー温度が低下した. M=Mn錯体のR=C18,1-NP(1),1-NPO(3)の錯体は反強磁性であるのに対し,R=1-NPO(4)の錯体は常磁性的な挙動を示した.M=Mn錯体の反強磁性発現の起源はハロゲン(C1)を介する超交換相互作用と関係している. 3.錯体の光学特性 M=Cu錯体の光吸収スペクトルは無機層が協同ヤーンテラー効果で歪んでいることに基づく2つの吸収ピークを示した.ピーク位置は強磁性を示すR=C18,1-NP(1),1-NPO(3)錯体(およそ370nm)と明確な強磁性は示さないR=1-NPO(4)錯体(およそ400nm)で異なり,無機層の構造がそれぞれD_<4h>的,D_<2d>的と推定できた.つまり有機分子がかわることで無機層の構造が変化し,結果として磁気特性が変化したと考えられる.これによりフォトクロミック分子のような光照射により構造変化を起こす分子を有機層に導入することにより,磁性を光で制御できる見込みができた.
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