研究概要 |
有機分子Rとして光反応性を示すπ共役分子を導入した錯体(RNH_3)_2MX_4(M=Mn,Co,Cu,X=Cl,Br)を合成し,磁気特性,光学特性を調べた.有機分子RとしてBZ(1),BZ(2),1-NP(1),2-NP(1),1-NPO(3),1-AZO(3)および1-BPO(3)を有する,Cu-Cl錯体およびMn-Cl錯体はそれぞれ強磁性および反強磁性を示したが,転移温度はそれぞれの分子に依存して異なった.一方,有機分子Rとして1-NPO(4)を有するCu-Cl錯体は2Kでも明確な強磁性を示さなかった.これらの起因を確かめるために,それぞれの錯体の吸収スペクトルを測定した結果,BZ(1),BZ(2),1-NP(1),2-NP(1),1-NPO(3),1-AZO(3)および1-BPO(3)を有するCu-Cl錯体と,1-NPO(4)を有するCu-Cl錯体では無機層が局所的に異なった(それぞれ,D_<4h>,D_<2d>)構造を有すると結論された.この結果,無機層の電子状態が大きく異なり,結果的に面内相互作用が変わったと推察された.一方,転移温度の変化は共役するπ電子数に依存した.この変化は,吸収スペクトルにおけるπ電子を起因する吸収位置と相関してたため,π電子を介した無機層間相互作用の変化の結果であると結論された. さらに,有機層に光で電子状態が変わるアゾベンゼン誘導体および光により励起三重項が生成される分子(1-AZO(3)および1-BPO(3))を導入した錯体を合成し,光照射による磁性の制御を試みた.アゾベンゼン分子は溶液中で照射する光の波長に依存して構造が変化した.これらを導入した錯体の磁性はトランス体が強磁性,シス体が常磁性と異なった.一方,励起三重項の生成による磁性の変化は観測できなかった.
|