研究概要 |
1、基板加熱スパッタによるSm-Fe系ハード薄膜の作製 SmFe_<12>系化合物は室温で一軸異方性を示すことがわかっているが、一般に構造安定化のためのTi,Mo,Vなどの第3元素の添加が必要であり、そのために飽和磁化の低下を招く。一方、薄膜プロセスを用いると第3元素無しで1-12構造を安定化できることがわかっている。そこで本研究では、比較的大きな飽和磁化、磁気異方性の期待されるSmFe_<12>系ハード薄膜を基板加熱を用いたスパッタ法により作製し、その磁気特性を調べた。X線回折の結果からSm12.8at%の試料においてSmFe_<12>系単相になること、これよりFe richな組成ではSmFe_<12>相とα-Feの混相になることがわかった。またこれらの試料では正方晶(002)面の反射強度が大きく、c軸が膜面に垂直に配向する傾向があった。磁化測定の結果、Sm10.6at%、基板温度500〜550℃で作製した試料ではH_c=3kOe,M_s=12.4kGが得られ、膜面に垂直に磁場を印加した場合、角型比の大きな減磁曲線を得た。また膜面に平行に磁場を印加した場合は50kOeの磁場中でも磁化が飽和せず、強い一軸異方性を示すことがわかった。 2、強磁場中熱処理によるNd-Fe-Co-B系ナノコンポジット薄帯の作製 キュリー温度T_cが結晶化温度を上回る組成のNd-Fe-Co-B系ナノコンポジット磁石を強磁場中で熱処理することにより、ハード相を配向させることを試みた.試料の仕込組成はNd_<12>(Fe_<1-x>Co_x)_<79>Nb_1B_8(x=0.36,0.7,1)とし、液体急冷単ロール法(ロール周速度V_s=30〜100m/s)により薄帯を作製した。強磁場中熱処理は、冷凍器冷却型超伝導磁石と縦型熱処理炉を用いて、薄帯の長手方向に最大磁場10Tを印加して行った。X線回折及び磁化測定の結果、x=1、V_s=50m/sの試料において、熱処理温度がT_cより低い675℃及び725℃の場合には、10Tの磁場中で熱処理した試料は、零磁場中熱処理時に比べてハード相の割合が増加する傾向にあること、T_c以上の熱処理温度の場合には磁場の大きさにほとんど依存しないことがわかった。
|