研究概要 |
基板加熱スパッタを用いて、結晶配向したSmFe_<12>(ハード相)と、α-Fe(ソフト相)からなるナノコンポジット薄膜を作製し、その配向と磁気特性の関係を調べた。以下にその概要を記す。 1, Smチップの枚数が28枚、及び基板温度T_s=550℃の条件で、(001)面が膜面に平行に良く配向したSmFe_<12>相単相が得られることがわかった。2,この結果を基に、二種類の膜構成でナノコンポジット組成の試料を作製した。 (1)sub/Ti/(SmFe_<12>,,α-Fe)/Ti膜:ナノコンポジット組成を得たが、SmFe_<12>相の配向は膜中のα-Feの体積比V_<Fe>が増加するにつれて、(001)配向から(101)配向と(001)配向の混合相へと変化した。V_<Fe>〜6%において保磁力にピークがみられ、このとき(BH)_<max>も極大をとった。(2)sub/(SmFe_<12>,α-FC)/Ti膜:下地層のTiを取り除いた結果、V_<Fe>〜48%まで(001)配向が良く保たれ、ハード相であるSmFe_<12>が結晶配向した3次元分散型ナノコンポジット滋石をはじめて作製することができた。保磁力はV_<Fe>〜25%まで増加傾向を示し、その後減少した。(BH)_<max>もV_<Fe>〜25%で極大をとり、(BH)_<max>、=20MGOeを得た。3,2-(2)の保磁力増加の傾向は、これまでの無配向のナノコンポジット滋石には見られない傾向である。この結果と比較を行うために室温基板でのスパッタを行い、無配向のSmFe_<12>とα-Feのナノコンポジット薄膜を作製した。その結果、無配向の場合では保磁力がV_<Fe>蚕の増加に対して単調減少することがわかった。この傾向はこれまでに報告されている無配向系の実験、及び理論計算の結果と一致する。このことから2-(2)の保磁力増加の傾向はハード相の配向に起因した現象であることが確かめられた。4,配向系での保磁力増加の傾向を説明するために、ハード相が配向したナノコンポジット磁石での計算機シュミレーションを行った。その結果ハード相間の結合力を弱く、ハード・ソフト相間の結合力を強くした場合に保磁力の減少率が抑えられ、実験に近い傾向を示すことがわかった。
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