本研究課題では第2種超伝導体の混合状態の磁気相図のより系統的な理解を目的に、高温超伝導体の研究を進め、以下の成果を得た。 1. 単結晶試料の詳細な抵抗率測定の結果、低磁場領域で磁束融解転移、高磁場領域で磁束グラス転移が観測された。また、中間磁場領域では抵抗が非オーミックに振る舞うが、それにも関わらず磁束グラスのスケール則に良く一致し、この結果得られる見かけ上の転移点は測定電流に依存しない。 2. 抵抗率測定により決定した磁束格子融解転移磁場を直流磁化曲線の第2ピーク磁場で規格化したものは、同一規格化温度では系のキャリヤ量の増加に伴い高磁場側に移り、直流磁化測定の結果と一致した。また、融解磁場の温度依存性は、デカップリング理論に現象論的に若干の修正を加えたものに良く一致した。 3. グラス転移磁場の温度依存性は系のキャリア濃度に強く依存し、低キャリヤ濃度では温度依存性が極めて弱い。これは、低キャリヤ領域での磁束格子相の性格が、より2次元的であることを示唆している。 4. 交流帯磁率の基本波成分および第三高調波成分に磁束格子相ないしは磁束グラス相から磁束液体相への相転移に対応する振る舞いを観測した。また、交流磁場周波数に対する依存性は、高温低磁場領域で弱く、低温高磁場領域で大きいことが分かり、それぞれ1次および、2次の相転移に対応している。 5. 以上から、磁気相図の高温低磁場領域の振る舞いが主に異方性パラメータで決定されることが分かった。これに対して、低温高磁場領域での振る舞いは異方性パラメータだけでなく、不純物濃度にも大きく依存する。 6. また、パルス磁場下の磁束線の運動には静磁場のもとでは無視できる粘性力が大きく影響することが分かった。この問題は、高温超伝導体の実用のために今後更に詳細に調べていく必要があろう。
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