次世代の半導体量子デバイスや光デバイスの開発を目標にした、高度に制御された半導体ナノスケール構造の研究が近年盛んに行われている。構造の微細化が進むにつれ、多重量子井戸、あるいは量子細線等の微細な構造をできるだけ微視的、局所的に評価する手段の確立が必要になる。 この研究で用いている手法は、STMにおいて、探針先端から試料にトンネルした電子によるルミネッセンス(トンネル電子ルミネッセンス)によって非常に局所的な光学的評価を行うというものである。これによりSTMに匹敵する空間分解能でルミネッセンス測定を行いうるだけでなく、同時にSTM測定を行うことにより、原子スケールで表面構造を特定しながらその場のルミネッセンスを測定することが可能になる。 今年度は、現有の超高真空・低温STM(ユニソク製)の組み込むための、集光系を装備した特殊な試料ホルダー、および真空槽外へ光を導く光ファイバーを用いた光学系を概念設計し、ユニソク社に製作を依頼して、装置に組み込み、調整を行った。また従来のSTM制御プログラムを改造しSTMのスキャンと共にフォトンカウンティングによるルミネッセンス像の記録を可能にした。上記2項目と浜松ホトニクス社製の光電子増倍管、高圧電源を組み合わせ、高分解能STMトンネル・ルミネッセンス測定システムを構築し、調節を続けている。 またSi系材料の電気的性質をSTMで調べようとする場合、表面凖位による影響を除かなければならないので、弗化水素処理による水素終端処理が必須になる。この処理には超高純度の純水を用いることが必要であり、超純水器を導入し、超高真空中で平坦な表面が得られる水素終端処理工程の確立を図った。
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