研究概要 |
金属Tl,In,Caおよびホスフィンガスを用いたガスソースMBE法によりTlInP,TlGaP,TlInGaPをInP基板あるいはGaAs基板に成長し、成長した結晶に対して光伝導測定を行い、そのバンドギャップの温度依存性を調べた。結晶成長温度は450℃であり、X線回折測定よりTlInP,TlGaP,TlInGaPが成長されていることを確認した。光伝導測定においては、基板のInPあるいはGaAsからの信号の他に明らかに長波長側に信号(ピークあるいはショルダー)が現れ、Tlの導入によりバンドギャップが狭くなっていることが確認された。更に、測定温度を変えた光伝導測定からは、バンドギャップエネルギーの温度依存性はGaAs,InP,InAsよりも緩やかになっていることが分かった。特に、バンドギャップエネルギーが成長したTlInP,TlGaP,TlInGaPより狭いInAsの温度依存性より緩くなっていることは注目に値する。現在までのところ光伝導測定のために成長したTlInP,TlGaP,TlInGaPのTl組成は10%程度以下と小さいが、更にTl組成を増やすことにより、更に緩やかな温度依存性あるいは温度無依存性を示すTlInGaP系混晶が得られるものと期待される。このために今後は、結晶成長条件の最適化に努め、Tl組成の多いTlInGaPに対しての研究を進める。 TlInGaPよりも少ないTl組成での所望のバンドギャップエネルギーが達成できると期待されるTlInGaAsのガスソースMBE成長を検討した。InP基板上へのTlInGaAsにおいてTl組成が20%以下の混晶領域ではあるが、成長可能であることが確認された。今後これらの結晶に対して、TlInGaPと同様の評価を行って行く。
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