研究概要 |
X線散乱トポグラフィはX線散乱ラジオグラフィの範疇の中に入るX線顕微法のことである。そのX線散乱ラジオグラフィ法は、本研究者らが提案し、多結晶の一般実用材料,単結品の応力検査による歪分布,珪素鋼の分域構造分布及び格子不整系半導体エピタキシャル膜での結晶成長と欠陥導入の関係等での結晶学的研究に成果を示してきた。しかしながら、エピタキシャル膜の深さ方向に対する欠陥の振舞いについては、観察がなされていなかった。今年度は、(1)上記表題を達成するためにX線波動場の理論計算機シミュレーション、(2)GaAs基板上のGaNエピタキシャルの構造を調べ、(3)測定用システムの再構築を行った。 エピタキシャル膜の深さ方向に関しては、動力学回折理論の計算機シミュレーションを行った。X線散乱トポグラフで得た実験結果をよく説明できると同時に、今までバルクの延長としてエピタキシャル膜を考慮して理論的な展開を行っていたが、エピタキシャル膜独自の計算が必要であることを見出した。 短波長発光材料として注目されているGaAs基板上のGaNエピタキシャル深さ方向分解の構造を調べるために極微小角X線回折を行い、構造多形(閃亜鉛鉱型・ウルツァイト鉱型)が深さ方向に観察されるものの結晶の対称性からは必ずしも説明できない結果を得た。そこで、GaAs基板上とGaNの結晶結合について、逆格子空間マップの測定を行い、詳細な情報を得た。 新たに購入したCCDカメラを今まで構築したX線散乱トポグラフィ装置に組み込んだ。そのため、画像取得、データ処理のソフトウエアを新たに組み上げる必要があり、それを行った。従来の位置敏感検出器と測定時間等に関しては遜色のない結果を得、さらに2次元測定ならびにより高い空間分解能をいかした新しい測定法を提案できた。
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