研究課題/領域番号 |
09650019
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
松下 照男 九州工業大学, 情報工学部, 教授 (90038084)
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研究分担者 |
小田部 荘司 九州工業大学, 情報工学部, 助手 (30231236)
古川 昌司 九州工業大学, 情報工学部, 助教授 (30199426)
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キーワード | 高温超伝導体 / 磁束線 / 相関距離 / 磁束バンドルサイズ / 次元性 / ピンポテンシャル |
研究概要 |
二次元的なBi-2212超伝導体単結晶試料について臨界電流密度のピーク効果が観測される温度・磁界領域でCampbell法を用いて磁束線の振る舞いを詳細に調べた結果、ピークが漫然と現れるのではなく、二つの異なる臨界電流密度をもつ状態が安定に存在し、ピーク効果が臨界電流密度の不連続な変化を伴う一次相転移であることが明らかになった。またこの転移に際してピンニングの強さを表すLabuschパラメーターは変化がない一方で、磁束線がピンから外れる距離である相互作用距離が不連続に増加する。したがってこのピーク効果はピンニング機構の変化ではなく、磁束線の性質の変化によるものであることが示された。その原因としては磁界の増加とともに磁束線が3次元状態から2次元状態にクロスオーバーしたことが考えられる。ただし、その場合でも磁束線の長さ方向の相関距離は数μm以上あり、磁束線は長さ方向には強く結合しており、パンケーキ磁束モデルで仮定されているようにCuO_2面間で切れ切れになっていない。この現象は超伝導の位相が磁束線の長さ方向には相関を失いつつも、磁束線が量子化しているために常伝導核の周囲の磁気的な結合が強く残っているものと解釈される。 同じBi-2212単結晶試料について、磁束線の2次元状態と3次元状態の両方の領域で不可逆磁界と磁化の緩和率を測定した。一方、両方の領域で広く臨界電流密度を測定し、磁束クリープ理論でこれを説明できるようなピンポテンシャルを抽出し、これを用いて同じ理論から不可逆磁界と磁化の緩和率を求めた。その結果、理論と実験はほぼ一致し、この理論で仮定している磁束バンドルの形状、すなわち長さ方向には長く、一方で横方向には超伝導体の次元性の影響で短いという形状が唯一、現象を説明するものであることが明らかになった。
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