本研究では、平成9年度から平成11年度にかけて、3次元的に空間制御したスペーサ分子混合LB膜の構造方法を確立し、これを「分子ふるい」に応用した。スペーサとしては球対称構造をもつフラーレン分子を用い、LB膜分子としては典型的なLB膜材料であるアラキジン酸を用いた。スペーサ分子数を調整することで、LB膜分子間の間隔の平均値を調整した。その結果、LB膜の分子専有面積を22Å〜32Åまで調整可能となった。しかも、アラキジン酸LB膜状にフルオロカーボンLB膜などのような大きい分子を積層する場合には、下層のLB膜の分子間隔を上層にあわせて調整することによって、分子配向性が著しく上昇することが、原子間力顕微鏡を用いた観察によって明らかになった。 そこで、我々は、本研究で構築した分子間隔制御されたLB膜の分子間隔制御性を確認するため、また、この空間制御された構造から新機能の発現をめざして、分子間隔制御したLB膜により、大きさ・形状の異なるガス分子のふるい分けを試みた。具体的には、新規作製したLB膜を感応膜として水晶振動子の電極上に累積した。その結果、高感度かつ、高選択性のガスセンサが構築できた。また、このLB膜は生体細胞の構造を模倣して、ポリマーによる裏打ち構造を設計することにより、耐久性・感度・選択性を高めることができることを見出した。さらに、ポリマー濃度および累積層数、作製時の累積条件を最適化することにより、α-ピネンの蒸気等、疎水性の強いガス分子に対して、センサ応答が70〜100倍に増大することを見出した。また、薄膜断面構造の原子間力顕微鏡による観察によって、センサ感度の増大が、感応膜の配向特性に起因することが立証された。
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