液晶複合系の協力現象としての各種物性を平均場理論にもとづいて系統的に研究した。 (1)基本モデルとして、ファンデルワールスカ(分散力)と剛体的斥力を分子間相互作用として持つ棒状分子系を考え、ネマチック相と等方相の間の相転移温度、相転移エントロピー、ネマチック相でのフランク弾性定数に対して改良された分子論的表式を与えた。これらの表式を用いて各種低分子液晶分子同族列の物性の化学構造や分子形状にたいする依存性を予測する簡便な方法を提案し、多数の実験データを統一的な立場から解析・整理した。 (2)基本モデルを屈曲性の主鎖型高分子液晶に拡張し、そのネマチック相への相転移を理論的に検討し、相転移温度、相転移エントロピーに対する分子論的表式を与えた。それによれば、分子量が増すにつれて転移温度は一定値に飽和するが、転移エントロピーはほぼ直線的に増大する。これは主鎖型高分子液晶で広く見られる実験的傾向をよく表現する。また、相転移特性や界面張力に関しては、剛直な低分子液晶の場合とある種の対応関係が成り立つことがわかった。 (3)異なった種類の分子を混合すると、成分分子間の協力性が増強される場合と成分分子が阻害し合って協力性が弱まる場合がある。このような混合効果を取り扱うには、分子の協力性を表現する「配向能」と名付ける量が有用である。各成分分子の配向能と混合物の配向能がどのように関連するかが重要問題であるが、その種々の場合を論じる一般的方法を開発し、低分子液晶複合系のフランク弾性定数に応用して実験結果の妥当な解釈を得ることが出来た。
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