様々な液晶複合系の相転移特性(融解を含む)を統一的な立場から総合的に研究した。 組成分子の物理的形態や化学的構造が、液晶としての物理的性質とどのように相関するかを詳細に検討した。新規液晶系の分子設計や物性予測に有用な種々の理論的結果および基礎的知見が得られた。 取り上げられた主な系は、異種分子の混合系、剛直棒状部と屈曲性鎖状部の分子複合体(二量体分子や典型的な液晶分子)及び主鎖と側鎖に棒状低分子を組み込んだ高分子液晶である。 それぞれの系について、構成分子間の協力的相関を一般的方法で取り扱い、液晶の自由エネルギーを成分系の配向秩序度の関数として求め、各系で期待される相構造、相転移温度、相転移エントロピー、フランク弾性定数などを計算した。理論的結果は実験事実と良く対応し、分子論的に重要な基礎的知見が得られた。 また、高分子膜との界面をネマチック分子と高分子の複合系として取り扱い、界面での分子配向と相転移、界面張力、アンカリング強度、界面高分子のメモリー効果等を理論的に検討した。理論的表式による実験データの解析によって、相互作用ポテンシャルパラメーターについて有用な基礎的知見が得られた。 カイラルスメクチックC液晶の反強誘電性多重相転移が分子の頭尾非対称性から生じることを示し、理論的解析とモンテカルロ法による計算機シミュレーションを組み合わせて予測した相構造はこの系での実験結果と良く一致した。
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