本研究は、高濃度ボロンドープp^+CZシリコンウエーハ中の欠陥の電気的評価と酸素の計測を目的としている。p^+ウエーハに対してショットキダイオードの作製が困難なことから、欠陥評価の有力な方法であるDLTS測定は行われていない。また、酸素の標準的測定法であるFT-IR法も、フリーキャリア吸収が大きいため、適用は困難である。そこで水素によるボロンの不活性化を利用し、キャリア濃度を低下させることによりダイオードの作製を可能にし、DLTS法による欠陥評価を行うことを試みた。同時にフリーキャリア吸収の低下により、FT-IR法による酸素濃度評価も可能と考えた。有効な水素の導入法は、試料温度300℃での水素プラズマ照射であった。蒸着金属としてSmを用い、ショットキダイオードの作成に成功した。この時推定5×10^<18>cm^<-3>程度のキャリア濃度は、表面領域で〜10^<17>cm^<-3>まで低下した。さらに簡便な方法として沸騰水中処理による水素導入の検討も行った。30分沸騰水中処理後、酸化膜除去を行うというプロセスを繰り返して8回行い、表面キャリア濃度〜10^<17>cm^<-3>を得た。水素導入によりダイオード作成に成功したので、DLTSによる欠陥評価が可能となった。一方水素は、ボロンのみならず、欠陥も電気的に不活性化し得る。従ってp^+ウエーハ中の欠陥の評価には、水素と欠陥の相互作用を前もって詳細に調べておく必要がある。通常抵抗率ウエーハで検討を行った。その結果、水素は欠陥を不活性化するだけではなく場合によっては活性化することがあることが判明した。このように電気的評価法では成果が得られているが、p^+ウエーハに対して、FT-IRによる酸素の計測はできなかった。現在表面領域で〜10^<17>cm^<-3>までキャリア濃度を低下させたが、尚一層の低下が必要であり、水素のさらに多量な導入法の検討が課題として残った。
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