平成10年度の実験に用いるための応力印加型加熱STMホルダーを設計・製作した。応力印加型加熱STMホルダー納入までは、予備的な実験として、既存の超高真空電子顕微鏡を用いて実験を行った。すなわち、電顕内で、電子顕微鏡用の応力印加ホルダーを用いて、Si(001)面上に3属原子であるInを吸着して得られる表面について、表面応力のIn吸着構造に及ぼす影響について調べた。清浄Si(001)面は、ダイマー(2量体)を形成することにより、室温以上では2×1構造となっていることは良く知られている。このため、この構造の表面層は、常に、ダイマーボンドの向きに平行に伸張応力下にある。この表面上にInを吸着させると4×3構造が形成され、この4×3構造は、清浄表面の2×1構造と同様に2種類の方位分域が存在する。本研究では、外部応力の影響により、この4×3構造にどの様な影響があるかを調べた。その結果、In吸着によって得られるる吸着構造は変わらないが、その分域構造に、表面応力の影響が認められた。また、Si表面上のGeの成長における外部応力の影響、たとえば3次元島成長のはじまる臨界膜厚や、臨界サイズの応力依存性等についても調べた。その結果、0.01%程度の圧縮応力を印可しただけで、3次元の島成長が促進されることがわかった。逆に、同程度の伸張応力を印可すると、3次元の島成長が抑制される傾向があることがわかった。これらの結果は、Geの格子定数が、Siのそれに比べて4%大きいことによると考えられる。ホルダー納入後、ホルダーの動作確認を行い、成長実験の準備を進めている。
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