3属原子であるInを下地温度450〜500℃の条件でSi(001)表面上に蒸着し、その表面上に形成される4×3構造の分域構造について外部応力の影響を調べた。具体的には4×3構造の方位分域である4×3、および3×4分域の面積比が、外部応力の印可によりどのように変化するかを調べた。その結果、あらかじめ圧縮性の応力を印可しておいて、その表面上にInを蒸着したときに形成される4×3構造の分域と、蒸着前の2×1清浄表面の分域との間の関係を調べたところ、印可する一軸性応力の方向と垂直な分域である1×2分域上に形成される3×4分域は、蒸着前の1×2分域に比べてその面積が増大し、3×4構造の形成が、下地の2×1表面内部応力を弱める働きをしていることが分かった。また、Si表面上のGeの成長における外部応力の永享についても調べた。具体的には、3次元の島成長の始まる臨界膜厚は、圧縮性の応力を印可した場合に縮小し、伸張性の応力を印可した場合に増大することがわかった。また、この傾向は、わずか0.1%の応力を印可しただけでも認められることがわかった。これは、SiにくらべGeの格子定数が約4%大きいことから、伸張性の応力を印可した場合には、下地の格子がわずかながら増大することで、蒸着したGeの格子の歪みの程度が小さくなることが原因であると考えられる。また、伸張応力の印可により、サイズの小さな3次元の島が消失することも観察された。
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