今年度は高温でのアモルファスシリコンの拡散係数を測定した。測定用試料としてタングステンチップ上にシリコン薄膜を堆積させたチップを用いた。本年度の研究に用いた測定方法は表面原子密度の変動を電界放射電子線の揺らぎとしてとらえ、その自己相関関数の衰退係数を測定することにより拡散係数を求める方法である。シカゴ大学のR.GOMER教授によって開発された方法であるが、高速での拡散を計測するには、高速電子回路を用いて電界放射電子線を処理し、その自己相関関数を求める必要があった。又、この方法はプローブホールと呼ばれる穴のあいた板をチップと電流検出器の間に置き、チップの一部からの電流を採取する必要があったが、今回開発した方法ではテレビカメラにより、チップ全体の輝度変動をビデオレコーダーによって記録し、画面上の所定の場所での輝度変動をデジタル化し、自己相関関数を析出する方法を用いた。このため、プローブホールは必要なく通中の電界放射顕微鏡によって表面拡散係数の測定が可能となった。その上、超短レーザーパルスを応用した加熱方法を用いることにより、時間分解能はパルス幅によって決定されることになり、従来の時間分解能をはるかに上回るものとなった。これによって拡散係数の測定が融点に近い温度で可能となる。(我々の所有するレーザーの時間分解能は5ナノ秒であるが、現在、50フェムト秒を切る程のパルスレーザーが存在する。)アモルファスシリコンの拡散係数を900〜1100Kの範囲で測定し、その温度依存性から求めた表面拡散の活性化エネルギーの値はEd=2.10±0.28eVであった。振動に関するPrefactorは1.1x10^<-2>cm^2/secとなった。測定領域は80Åx80Åであった。
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