著者は、これまでの研究でジカチオン性の二鎖型界面活性剤N、N'-ω-p-xylene-bis-[stearyldimethylammonium chloride](XSAC)LB膜やモノカチオン性の一鎖型界面活性剤Octadecylamine(ODA)LB膜への染料分子、α-ナフトールオレンジ(NO)及びメチルオレンジ(MO)の吸着特性とその吸着状態や分子配向について分光学的に検討し、明らかにしてきた。また、水晶振動子法を用いてその吸着過程も検討した。 平成12年度の実験ではODA LB膜への色素分子の吸着過程および吸着状態をさらに明らかにするため、色素吸着前後のLB膜の表面を原子間力顕微鏡を用いて、形態学的に観察した。まず、平滑なシリコン基板上に1層〜5層のLB膜を作製し、そのLB表面およびMOやNO水溶液に一定時間浸漬後のLB膜表面を観察し、吸着前後の表面の違いを比較検討した。その結果、吸着前後で大きな差異が見られた。すなわち、ODA LB膜は吸着前はほぼ平滑な表面で層状構造が確認されたが吸着後は一部島状構造も観察された。これは色素吸着によって分子間距離が増大したためと考えられる。さらに、ナノオーダーでの観察により色素吸着後においてはLB膜の層状構造の再構築が起こり、LB膜中の炭化水素鎖が指組み構造へと構造変化することが確認された。これらの結果は分光学的に得られた結果と良い一致を示した。
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