研究概要 |
本研究は、複合金属酸化物を透明導電膜用材料として採用することによって、“大気中で600℃まで"、もしくは“真空中および不活性ガス中で800℃まで"電気的特性および光学的特性が劣化しない高温使用耐性に優れた透明導電性薄膜の実現を目的としている。平成9年度の研究実績を以下に報告する。 高周波マグネトロンスパッタリング法を用いて複合金属酸化物透明導電膜の作製技術を確立した。透明導電膜材料として,Zn_2In_2O_5,ZnSnO_3及びIn_4Sn_3O_<12>の任意の組み合わせからなる複合金属酸化物の採用を提案した。これらの材料の組み合わせからなる複合金属酸化物薄膜では,全組成範囲で透明導電性を実現できた。また,Zn_2In_2O_5-In_4Sn_3O_<12>及びZnSnO_3-In_4Sn_3O_<12>系のアモルファス複合金属酸化物において,ITO薄膜に匹敵する抵抗率を有する透明導電性薄膜を実現した。透明導電薄膜の高温耐性を評価し,高温安定性を支配する物性を解明する目的から,高温下での電気的(抵抗率、移動度、キャリア密度)特性測定技術を確立し,測定した。また,膜の熱処理前後での物理化学分析を実施した。さらに,膜の光学的(透過、反射スペクトル)、結晶学的及び化学的(耐薬品性)特性を評価した。その結果から,各種雰囲気中,約800℃までの高温下での金属酸化物透明導電膜の抵抗率の増加は,結晶粒界での酸素の吸着が原因の粒界散乱が原因であることが明らかにした。材料面では,In_2O_3-SnO_2系及びIn_4Sn_3O_<12>が優れた高温耐性を実現できた。また,In_2O_3に対するAg_2Oの添加効果を調べる中で,P形伝導を示すIn_2O_3-Ag_2O系透明導電膜を実現し,大気中500℃までの高温耐性を確認した。
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