研究概要 |
本研究は、複合金属酸化物を透明導電膜用材料として採用することによって、“大気中で600℃まで"、もしくは“真空中および不活性ガス中で800℃まで"電気的特性および光学的特性が劣化しない高温使用耐性に優れた透明導電性薄膜の実現を目的としている。平成10年度は,昨年度に引き続き複合金属酸化物透明導電膜の室温での電気的、光学的、結晶学的及び化学的特性を評価した。また、膜の高温耐性を評価し,膜の高温安定性を支配する物性を解明する目的から、膜の熱処理前後での物理化学分析を実施した。その過程で、複合金属酸化物透明導電膜の仕事関数の組成依存性を明らかにした。さらに、複合金属酸化物透明導電膜の高温耐性を支配する主因を解明するために、基本材料である2元化合物のZnO,In_2O_3及びSnO_2系透明導電膜の高温耐性との関係を調べた。 複合金属酸化物透明導電膜の高温耐性は基本的には構成金属元素に支配され、高温基板上に作製すると改善されることが分かった。また、複合金属酸化物透明導電膜の高温耐性は構成金属組成の変化によって、制御できることが分かった。特に、Znを含む膜では結晶粒界やZnの結合手に酸素が吸着するため、粒界散乱が支配的となり酸化性ガス雰囲気中では低温でも抵抗の増加を生じる。一方、InはSnとZnの中間的な性質を示すため、ITO,In_4Sn_3O_<12>そしてSnO_2:Sbの順に高温耐性が良くなる。従って、本研究の目的である高温使用耐性に優れた複合金属酸化物透明導電膜は、Snを多く含む組成の膜を高温基板上に作製することにより実現できることを明らかにした。
|