本研究は、不連続段差や孤立物体間の物理的距離に対応した動的な位相分布を瞬時に凍結させて高分解能で絶対計測することができる新しいヘテロダイン技術と不連続位相のアンラップ法の開発を行ない、その3次元形状計測への応用を目指すものである。昨年度に引続き、空間周波数多重化された縞パターンから得られる異なる感度の位相計測値を統合することによる絶対位相検出法と、位相アンラップ技術の開発を行なうとともに、現実の運動物体を対象とした計測の実証実験を行なった。その内容は以下の通りである。 1空間周波数多重化し空間周波数同時走査する絶対位相検出法の提案 半導体レーザーなどの光源の時間周波数を走査する既存の絶対位相計測法に代わるものとして、物体上に生じる縞パターンの空間周波数を走査する絶対位相計測法を提案した。既存の方法における光源の時間周波数の走査は逐次的に行なわれるのに対して、今回した提案方法は2次元空間周波数平面上に多重化した多数の空間周波数を同時に利用することにより1枚の瞬時画像の取り込みで実効的な周波数走査が実現できることを示した。 2.時間と空間のパラメータを利用した絶対位相計測法の相互関係の明確化と技術の体系化 時間信号と時間周波数スペクトルを利用した絶対位相計測法と空間信号と空間周波数スペクトルを利用した絶対位相計測法の間に存在する類似性や双対性の関係を明らかにし、光応用3次元形状計測技術の体系化をはかるとともに、本研究で提案した計測法の位置づけを明確化した。 3.逆渦重畳法による位相アンラップアルゴリズムの提案 周辺に回転性の位相場をもつ位相特異点のある位相をアンラップするための新しいアルゴリズムを提案し、不連続段差のある位相分布の絶対位相決定への適用の可能性と限界を明らかにした。 4.空間周波数多重化による瞬時計測法の有効性の実証実験 パターン投影による空間周波数多重化空間周波数走査法の実験システムを構築し、互いに孤立した2つの運動物体に対して瞬時絶対位相の検出実験を行ない、各物体の立体形状とともに3次元空間内における相互の位置関係と計測する実証実験を行ない、提案した方法の有効性を確認した。
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