液体の屈折率測定法としていろいろの方法が提案され、実際に市販品としても売り出されている。それぞれに長所、短所があるが、高精度でかつ短時間に測定する方法はなかった。我々は、レインボ-法とよぶ新しい液体の屈折率測定法を開発した。この方法は自然界で見られる虹の仕組みと密接な関係がある。本年度の研究において、この方法の理論的解析を主におこなった。まず、幾何光学的取り扱いにもとづく光線追跡を行い、コンピューターシミュレーションによって最小振れ角を求めた。計算で求めた主虹、副虹、さらに高次の振れ角は実験値と非常に良く一致している。このシュミュレーションによって、次数を高くすると屈折率測定の感度が向上することや、用いるレーザー光の波長にはほとんど影響されないこと、全反射が起こらない条件下で、セルの肉厚が厚いほど屈折率測定の感度が高くなることがわかった。さらに発展した理論解析を行うために、ホイヘンスの原理にもとづく波動光学的取り扱いをコンピューターシミュレーションで行った。補正関数などを導入することで、迅速かつ高い精度のシミュレーションができるようになり、計算で求めた干渉縞の強度分布は実験と完全に一致する。これによって、干渉縞全体の分布から屈折率が決定でき、単に干渉縞列の第一縞の位置のみを用いるのに比べて測定精度は一桁以上向上した。また、このシュミレーションによって、適正なレーザービーム幅や屈折率感度に与える円柱セルの半径や肉厚の影響が詳しく調べられた。このレインボ-屈折率計と市販の示差屈折計との比較実験も行った。地下水や河川の屈折率測定を多数おこない、それらの元素分析の結果と照合した。その結果、純水との屈折率の差は主に水中のカルシュウムイオンによることがわかった。また、屈折率と電気伝導度との相関に注目する簡単な方法が水質を調べる上で非常に有効であることがわかった。
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