| 研究概要 |
本研究では、研究代表者らが提案した波長選択光フィルタ(特許第2713358号,1997年10月31日)の特性向上および評価と、新たな応用について研究した。この光フィルタは、電気光学効果を持つ誘電体基板上の円盤形ピルボックス光共振器とこれに結合した入出力導波路により構成される。
初年度は、光フィルタ試作のための導波路作製プロセスの検討と、フィルタ構造の最適設計および電極による共振波長制御の特性解析を行なった。特性解析では、1.55μm帯においてグレーデッド屈折率分布のピルボックスについて解析し、従来のステップ型と同様の特性が得られることを確認した。また共振波長制御は、導波路と電極の寸法を最適化して、FSRが104GHz、透過帯域幅2.4GHzの場合に、変調電圧11Vで800MHz以上の周波数で20dB以上の消光比、チャンネル間隔10GHzにおいてクロストーク-20dBの解析結果を得て、本フィルタを高速の波長選択光変調器として使用できることを提案した。
第2年度は、提案した波長選択光変調器について、フィルタ共振波長付近の変調において、光出力振幅が入力の3倍以上に増大する現象を見出した。これは本波長選択フィルタを変調器として使用するとそれ自体が利得を有するという従来に無い方式であり、「振幅増大変調」と名付けた。変調波形を最適化して利得を最大で6.5倍にすることができた。
導波路作製についても、特にレーザビーム直接描画方式にしぼって検討を行った。ピルボックス共振器作製の精度向上のため、動作速度による挙動を詳細に検討し、ソフトウェアによる最適化をはかった。また微細パターン描画のために、超解像ビームの採用を行った。現状ではフォトマスク精度に若干問題があるものの、電子ビーム露光法を併用することにより、計画どおりのフィルタが試作できるめどがたった。
|
