半導体トレンチを誘電体の2次元溝と仮定し、昨年度導入したDEC Alphaコンピュータも用いて、大容量メモリと演算スピードを要求される境界要素法シミュレーションにより、誘電体トレンチからの干渉分光強度データを求めた。そして、数式処理ソフト付属のFFTとウェーブレット解析ツールを用いて、トレンチ形状の光波による測定限界を調べた。本年度はさらに、現実に近い3次元トレンチの数値解析を始めた。具体的な研究内容は以下に示す通りである。 ・誘電体の2次元溝に、ガウスビームを照射した際の干渉分光強度データを境界要素法を用いて求め、FFT処理により深さ測定を行った。誘電体の場合には、金属と違って光は基盤中にも浸透するため、溝幅が遮断波長に近付くと溝中からの反射光が少なくなり、表面からの反射光に埋もれて深さ測定が困難になる事が分かった。しかし、観測角度を正面より変化させることにより、溝中からの信号が顕著に見えてくることが分かった。これにより、誘電体の場合も金属の場合と同様に、溝方向に電界成分を持つE偏光では遮断の影響を受け10%ほど深く測定され、磁界成分を持つH偏光では遮断の影響を受けず正確に深さ測定出来ることが分かった。 ・数式処理ソフトMATLABのWavelet Toolboxを用いて、干渉分光強度データにウェーブレット処理を施し、深さ測定解析を行った。これより、周波数領域と時間領域の情報が同時に得られた。 ・3次元境界要素法(BEM)と3次元時間領域差分法(FDTD法)の二つの手法により、直方体状の金属トレンチに3次元ガウスビームを照射したときの散乱特性を得ることが出来た。これより、深さと開口面の大きさを変えで、干渉分光データを得ることが出来るようになった。
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