本研究は、波長可変半導体レーザの簡略構成を目的に、従来の静電力ではなく、光ビームの熱作用により外部共振ミラー(微小梁)を変位させるもので、微小梁と半導体レーザを一体集積できる特徴がある。以下に、申請書記載計画に対応させ本年度の成果を要約する。 1.発振波長の測定:まず、外部共振器長が極めて短い(数μm)場合の半導体レーザ(LD)の波長測定法を提案した。次に、波長を含むLDの発振メカニズムを解明するため、外部共振器長、外部ミラーの反射率、駆動電流などの影響を実験検討し、以下の諸点を明らかにした。 (1)発振波長や複合共振出力は、外部共振器長λ/2(λ:波長)で周期的に変化する。 (2)波長変化幅はI/Ith≧1.4で飽和し、戻り光強度により拡大する。 (3)サイドモード抑圧比、スペクトル幅は、戻り光が合位相の場合、電流、戻り光強度により向上する。 2.外部共振ミラーの設計:下記により微小梁への要求条件(λ/2以上の変位)を実現した。 (1)熱膨張係数差が大きい金属と誘電体のバイモルフ膜を付与した3層膜の熱変位式を導出した。 (2)数値解析により、GaAs系、InP系いずれの半導体レーザに集積した微小梁に対しても、100℃の温度変化でλ/2以上の変位を実現し、最大変位を得る膜材料、厚みなど、設計の全体像を明らかにした。 3.理論解析:これまで構築してきた半導体レーザの波長スイッチングや偏光スイッチングの理論を、本研究の外部共振器長が極めて短く、光帰還の高い半導体レーザの発振特性、周波数変位メカニズムの解明に適用すべく検討中である。
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