我々は、NMRの分野において革新的な成長を遂げてきた固体高分解能NMRスペクトロスコピー法と液体NMRイメージング法(MRI)との融合を計ることにより、固体材料の新しい分析法、また現在の臨床用MRIでは計測されない生体中の固体成分に対するMRI法として非常に期待の大きい「固体NMRイメージング法」の開発を行ってきた。特に本研究では、マジックエコーと呼ばれるNMR信号を用いた我々独自のイメージング方式に、更なる改良を加えることにより分解能の向上を計るとともに、新しい画像コントラストを導入し、NMRイメージングの有効性を飛躍的に高めることをその目標とした。 まず我々は、新しい画像コントラストとして、プロトンNMRスペクトルの2次モーメント、および1H-13C交差緩和時間を取り上げ、そのイメージング基礎実験を行った。いずれのコントラストも分子の運動性に関する新しい情報を与えるものであり、例えば、弾性材料の劣化度を示すクロスリンク密度に関する画像を得ることができる。特に、交差緩和時間は2次モーメントに比べ、分子運動の異方性に関する情報を与え得る点で優れている。また、マジックエコーイメージング方式に改良を加えることにより、イメージングにおける重要なハードウエアである磁場勾配発生系に対する高度な技術的要請を緩和し、従来より約1桁低速な磁場勾配を用いても従来と同等の分解能を達成する事にも成功した。 これらの成果は、いずれも「固体NMRイメージング」の有用性を格段に向上させるものであり、今後、特に材料評価の分野において多大な寄与を為すものと期待できる。
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