本研究の目的は、2次元の位置有感検出器をX線検出部に採用する事により、従来より高い検出効率、高いエネルギー分解能を同時に実現する広帯域X線結晶分光器の可能性を実証し、その特性の解明をおこなうと共に、この方式の最適な構成法を明らかにする事である。本年度の課題としては、(1)「平板結晶+2次元検出器」形式の特性についての実験的検討をさらに進める事、(2)これまでに高計数率特性における限界が明らかになっているため、これを突破できる新方式の検討を進める事、及び(3)「ヨハン型結晶+2次元検出器」など他の形式の得失についても検討する事、の3点を掲げた。以下これに沿って今年度の実績を示す。 (1) 入手が容易なSi(111)単結晶を用い、その表面処理による分解能と反射強度への影響を系統的に調べた。また、非常に高い反射強度を持つが従来の結晶分光器では分解能が極めて悪いグラファイト結晶について、今回の方式で分解能がどうなるかを調べた。これらは、前年度までにLiF結晶で見いだされているモザイク結晶における近似的収束効果を、より多様な系について調べようとするもので、現在データの解析を進めている。 (2) 高計数率特性に優れている事が期待される新しい位置エンコーディング方式(「拡張加重結合容量法」)を考案し、その原理的動作を実証した。これは8ビット程度のADCを用いて詳細位置と粗い位置の同時決定を行い高い位置分解能を得るもので、数Gsの高速ADCが使用でき、従来にない高計数率特性が期待できる。 (3) ヨハン型分光器への応用についての検討は現在さらに進めているところである。
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