有限系での相分離過程における弾性効果

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09650074
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 小林 亮 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (60153657)
• 研究分担者: 柳田 達雄 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (80242262) ; 西浦 廉政 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00131277)
• キーワード: grain boundary / polycrystal / phase field model / singular diffusivity / nonlinear semi-group theory / segregation / granular materials / self-replicating

研究概要

1. 多結晶における粒界の運動を記述する新しい数理モデルを構築した。このモデルはフェーズフィールド型のモデルであるが、従来のこのタイプのほとんどのものは、有限個の極小値をエネルギー空間に導入したために回転対称性を満足しない、という共通の欠陥を持っていた。我々は、分子の方向に関する秩序変数と角度変数を用い、新しい形式のエネルギーを導入することによってこの問題を解決した。またこのモデルを用いて微小ダレインの縮小と回転を同時に再現することに初めて成功した。
2. 上記のモデルは数学的にも非常に新しい内容を含んでいる。正確には、角度変数の発展方程式が微分可能でないエネルギーから導かれるために、無限大の特異拡散性を持つ方程式になるということである。そのことによって区分的に定数であるような変数の時間発展を偏微分方程式を用いて表現することが可能になった。さらに我々は、この方程式が非線形半群理論という抽象的な枠組の非自明な一例となでていることを示し、そのことをもとに方程式のいろいろな性質を導出した。
3. 2種の粉粒体の水平方向への分離が必ずしも回転円筒の中でなくとも、傾斜面を流下するだけで起こりうるという実験的事実を発見し、粒子シミュレーションを行うことでそのことを確認した。この事実から、回転円筒中の軸方向分離も流下面の存在自体が本質で、従来言われるような動的安息角の差異が原因ではないという仮説に到達した。
4. 自己分裂パターンのダイナミクスを律する数学的構造を、実験数学的手法を用いて明らかにした。これにより、整列したサドルノード分岐とその間を結ぶ経路の存在がこのようなパターン形成の本質であることが示された。

研究成果

• [文献書誌] R.Kobayashi and Y.Giga: "Equations with Singular Diffusivity" J.Stat.Phys.(to appear).
• [文献書誌] J.A.Warren, W.C.Carter and R.Kobayashi: "A Phase Field Model of the Impingement of Solydifying Farticles" Physica A. (to appear).
• [文献書誌] R.Kobayashi, J.A.Warren and W.C.Carter: "Vector-valued Phase Field Model for Crystallization and Grain Boundary Formation" Physica D. 119. 415-423 (1998)
• [文献書誌] K.Ueda, R.Kobayashi and T.Yanagita: "Segregation of Granular Materials in a Rotating Tube" Statistical Physics-Eeperiments,Theories and Computer Simulation,eds.M.Tokuyama and I.Oppenheim. 141-141 (1998)
• [文献書誌] Y.Nishiura and D.Ueyama: "A Skelton Structure of Self-replicating Dynamics" Physica D. (to appear).
• [文献書誌] T.Yanagita: "A Three-Dimensional Cellular Automation Model of Segreation of Granular Materials in a Rotating Cylinder" Physical Review Letters. (to appear).
• [文献書誌] 西浦 廉政: "非線形問題1-パターン形成の数理" 岩波書店, 279 (1999)