研究概要 |
本研究では,低温構造用材料として用いられるステンレス鋼SUS304を試験材料として選び,繰返し変形挙動に対する予ひずみの方向と大きさがどのような影響を与えるかについて実験的に調べた.実験は,液体窒素中で薄肉円筒試験片に予ひずみを与えた後、ねじり,引張と圧縮の繰返し変形を行い,予ひずみの大きさと方向が繰返し応力-ひずみ曲線に与える影響を調べた.繰返し変形挙動を調べるため,繰返し応力-ひずみ曲線の応力振幅と,予ひずみおよび繰返し変形によって生ずるひずみを加えた累積塑性ひずみの関係を用いた.得られた主な結果は次のとおりである. (1)予ひずみを繰返し方向と直角方向に与えた場合,繰返し変形の初期の段階で硬化が大きく進むが,繰返し負荷の回数が増加するにつれて硬化は緩やかになり,予ひずみを与えない場合の繰返し特性に近づく. (2)予ひずみを繰返し変形と同方向に与えた場合には,予ひずみと繰返し塑性ひずみはほぼ等価で,両方の硬化特性はほぼ同じになる. (3)異なった大きさの予ひずみを与え,予ひずみ方向と同方向で繰返し変形を行った場合,予ひずみの大きさによって硬化特性は変わる.しかし,異なった大きさの予ひずみに対する応力振幅と累積塑性ひずみの関係は,予ひずみの大きさを換算して繰返し塑性ひずみに加えると,ほぼ同じ傾向を示す曲線が得られる.
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