超高速レーザなどにより、極めて短時間の内に衝撃的に加熱を受ける傾斜機能材料に生じる温度や動的熱応力は、従来の古典熱弾性理論では表現出来ない複雑な伝播挙動を示す。本研究では、熱の緩和時間および温度場とひずみ場の連成項を考慮した一般化された熱弾性理論に基づき、衝撃的に加熱を受ける傾斜機能材料からなる平板、中空円筒および中空球に生じる1次元の熱波と熱応力波の伝播特性を、特性曲線法を用いて解明することを目的としている。 平成10年度は、表面をランプ加熱される、あるいは内部熱発生を生じる 1. 傾斜機能有限平板の熱波と熱応力波の伝播挙動 2. 均質中空円筒の熱波と熱応力波の伝播挙動 3. 傾斜機能中空円筒の熱波と熱応力波の伝播挙動 を特性曲線法を用いて数値解析した。その結果、極めて早い熱的じょう乱が生じる場合には、熱(温度)も波動としての伝播挙動を示し、従来の古典弾性理論とは異なった熱波と熱応力波の伝播挙動を示し、本研究での緩和時間および連成項を考慮した解析が重要であることがわかった。また、セラミックと金属を組成成分とする傾斜機能平板および傾斜機能中空円筒に対する数値結果より、傾斜組成分布が熱波および熱応力波に大きく影響を及ぼし、高温側に多くのセラミックを有する傾斜機能材料が動的熱応力緩和に有効であることが定量的に示された。 本研究により、傾斜機能材料に代表される不均質材料の熱波と熱応力波の伝播挙動の特性曲線法を用いた解析法が確立されたので、次年度は本解法を非線形材料に拡張すること目標としたい。
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