前年度の実績を踏まえて、時効組織による変形強度ならびに変形挙動の変化を調べるため、二種類の時効処理材(540℃、8時間時効材および300℃、71時間プラス540℃、4時間二段時効材)について、温度77K〜573K、ひずみ速度10^<-3>S^<-1>から10^3S^<-1>での引張り変形試験を実施した。 得られた結果は次の通りである。いずれの時効処理材の場合にも、強度は温度の低下、ひずみ速度の増加と共に上昇した。また、高速変形の場合には、室温以下での温度域において顕著な加工軟化現象が見られ、断熱的に変形中の塑性変形仕事が熱に変換されることによって生じる温度上昇が変形挙動に大きな影響を及ぼしていることが明らかになった。これらの結果を先に実施した450℃4時間時効材の場合に比べると、強度は低いが、その温度、ひずみ速度依存性は殆ど同一であり、応力の熱的成分はこれら三種の時効処理によって殆ど影響されず、応力の非熱的成分のみが影響されていることを示している。また、断面収縮率、及び全のびは高温時効材では顕著な増加が見られるが、温度の上昇、ひずみ速度の上昇によっても増大することが明らかになった。また、室温以下の低温域においては、室温時よりもむしろ延性が増加する挙動が見られ、静的、低温変形では殆ど脆性的な挙動を示す二段時効材においても、高速変形ではかなりの延性を示すことが明らかになった。
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