研究概要 |
金属の相変化のなかで特に凝固・溶融現象を取り上げ,その過程を理論的・解析的に記述することを目的として,1.自由境界問題の数値解析手法の開発,2.2次元2相問題への適用,3.アルミニウムの溶接における自由表面と熱影響部の性質,を主な検討課題として以下の結果を得た. 1. 自由境界問題の数値解析手法の開発・・・積分ペナルティ法を用いたステファン問題の数値解析手法を開発した.積分ペナルティ法によって自由境界におけるステファン条件が領域積分に置き換えられることが示され,有限要素法などの領域型解法との適合性がが飛躍的に向上することがわかった.また,ペナルティ項の処理や探索方向の工夫によって精度よい解析が可能となった. 2. 2次元2相問題への適用・・・まず1次元2相問題で厳密解によく一致することを確認したうえで,解の挙動に及ぼすペナルティ数,空間増分,時間増分の関係を,マトリックスのノルム評価によって明かにした.ついで2次元2相の問題を解析した.その結果,予測された解の挙動が観察され,境界上においてステファンの条件も満足していることを確認した. 3. アルミニウムの溶接における自由表面と熱影響(HAZ)部の性質・・・アルミニウム試料に対してTIG溶接機を用いて突き合わせ溶接を施し,溶接部を含む領域の組織,硬さ,変形を実験的に検討した.その結果,HAZ細粒部の形成が認められるとともに,溶融部の硬度が約10〜20%低下していることがわかった.さらに,引張試験において微視領域のひずみをマイクログリッドを用いて測定したところ,溶接金属部のひずみ集中が大き,硬度測定の結果と対応していることが明かとなった.
|