マイクロ波プラズマCVDを使って純チタン及びS45C基板上にダイヤモンド薄膜、イオンプレーティングによって工具鋼、超硬基板にダイヤモンド状炭素膜を被覆した。ダイヤモンド薄膜の創製にあたって、メタンガス濃度を0.3、0.5、1.0及び1.5sccm、それに対応して水素ガス濃度を98.5〜99.7sccmまで変化させた。このとき、圧力を50、60、70及び80torr、基板温度を973、1073、1173及び1273Kに変え、蒸着時間を0.5、1.0、1.5、2.0、4.0及び8.0hrsとした。ダイヤモンドの形成の有無は、X線解析、ラマン分光分析器で分析した。ダイヤモンドの形成は、蒸着時間が短いと核形成密度が低く、代わりにアモルファスカーボンが形成されていた。蒸着時間の増加につれて、ダイヤモンド結晶化が進み、同時にTic、Fe_3Cの炭化層が発達していた。蒸着時間が長くなると、ダイヤモンド膜の厚さが増え、基板から自然にはく離した。これは、基板とダイヤモンドとの熱膨張係数の差異に起因したものである。ダイヤモンドの結晶化は蒸着時間が長いほどよい。蒸着ガス濃度はメタンガスが1.0%のとき最適で、温度は1073Kであった。ダイヤモンド状炭素膜は膜厚が厚くなると、ダイヤモンドと同様にはく離する。膜厚を約1μmにして成膜した。この膜の成膜が摩擦摩耗特性の改善に大きく寄与した。これは、ダイヤモンド状炭素膜が摩耗過程で、グラファイトに変化することで、摩擦係数の低下がもたらされる。ダイヤモンド状炭素膜の被覆が摩耗の進行を抑制するが、すべり距離500m以前では、激しい相手材の摩耗がみられた。
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