研究概要 |
マイクロ波プラズマCVDを使ったダイヤモンド薄膜の形成過程を詳細に検討したのが平成9年度の研究であった。ダイヤモンドの核形成は蒸着時間5分ほどで、前駆体となる微小な粒子が点在した。蒸着時間の増加につれて、微小粒子の数が増える。50分になると、粒子の凝集体が基板表面をかなりの部分覆うことになる。1時間を経過するとダイヤモンドの結晶成長が始まり、2時間になると完全なダイヤモンド薄膜となる。核形成の初期段階にみられる前駆体の大きさと数は反比例している。このような前駆体の形成はフラクタル次元を持ち、初期段階では、1.4程度から、次第にその値が大きくなって薄膜になると、2.0の値となる。この時、基板表面を超音波洗浄すると、フラクタル次元は大きい傾向にあり、薄膜化が進むことになる。したがって、ダイヤモンドの薄膜化は、まず、微小粒子の形成から始まって時間経過につれて凝集体、さらには結晶の薄膜となっていく。平成10年度では、メタンガス濃度、圧力、基板温度及び蒸着時間を変えて調べた。ダイヤモンドの結晶化は蒸着時間が長いほど、メタン濃度が1.0%のとき、基板温度は1073Kのときが最適であった。この過程で形成されるダイヤモンド状炭素膜の摩擦摩耗特性を調べた。密着強度は40Nもあり、摩耗過程で過度な荷重をかけない限り、割れやはく離はほとんど生じない。摩擦係数は0.15以下であり、はく離が生じない限り,低い摩擦係数を保った。また摩耗もほとんど起こらず、相手材の摩耗もかなり低減できた。
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