粒子分散複合材料の非線形構成則に関する研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09650107
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 九州工業大学
• 研究代表者: 中垣 通彦 九州工業大学, 情報工学部, 教授 (90207720)
• 研究分担者: 堀江 知義 九州工業大学, 情報工学部, 助教授 (40229224)
• キーワード: 粒子分散複合材料 / 等価介在物理論 / メゾメカニックス解析 / Self-consistent法 / 均質化法 / 繊維強化複合材料 / クラスター / 熱伝導・熱膨張

研究概要

組成材料の物性値が著しく異なる複合材料は,微視的構造尺度において非均質性を持ち,それが巨視的な材料特性に顕著な効果を及ぼす.これまで複合材料の挙動を記述する正確な構成則を立てるため,多くの研究者が多様な方法で粒子分散複合材料の構成則に関する研究を行って来た。それらの中,複合材料の介在相の形状によらない混合則即ち,Voigt,ReussやHashin-Shtrikmanモデルがあり、弾性問題に対する上下限となっている。しかし、繊維介在物強化材料などの複合材料では介在物の形状を無視できず、粒子分散複合材料の開発が重要な研究課題となっている。楕円体粒子介在物についてのEshelbyの等価介在物理論が紹介されて以来,多粒子分散複合体への拡張が容易となり,とりわけMori-TanakaのMean Field Theoryを混合則とする粒子分散複合材料のモデルがいくつか開発された.これらのモデルは総称してMFM(Mean Field Method)モデルと呼ばれ、粒子の外界の剛性をマトリックスの剛性とし,応力と歪みの相平均的な視点から構成則を求めるモデルである.
これらのモデルは介在相の体積分率が高くなる場合、精度は著しく悪化し実際的な適用には疑問点が多い。上のモデルに対し、本研究では:
(1)粒子の外界の剛性を複合体の平均剛性であると仮定するSCC(Self-consistent Compliance)法を複合材料の新たな構成則理論の手段として開発し提唱した。このSCC混合則を用い,弾塑性分布関数を用いて応力分布を表す事により粒子間の応力干渉を取り扱い,粒子分散複合材料のメゾ局所性を表現する局所剛性法,即ちLRM法(Localized Ridigity Method)を提案して弾塑性構成則を構築した。
(2)開発した構成則モデルを実証するため、粒子分散複合材料のメゾメカニックス解析をFEMによる均質化法を用いて実施し、巨視的な挙動をベンチマーク参照データとしてデータベース化した。
(3)開発した上記(1)の粒子分散複合材料の構成則を発展させ、針状の介在物が分散する繊維強化複合材料の構成則モデルを構築した。実際上の問題である繊維の偏り(クラスター)をもモデル化し、配向性による巨視的な材料特性を解析した。
(4)さらに上記(1)、(3)のモデルを発展させ、複合材料の熱伝導と熱膨張に関する材料特性を求める理論則を構築した。

研究成果

• [文献書誌] 呉亜東,中垣通彦: "粒子分散モデルによる複合材料の巨視的構成則" 日本機械学会九州支部第50期総会講演会論文集. 100-102 (1997)
• [文献書誌] Michihiko Nakagaki and Yadong Wu: "Elastoplastic constitutive law for particle dispersed composite material accounting for mesoscopic inhomogeneity" Proceedings of 3rd international conference on fracture and strength of solids. 1. 583-588 (1997)
• [文献書誌] Michihiko Nakagaki,Yadong Wu,and Seiya Hagihara: "Dynamically propagating crack in graded particle dispersed composite modeled by neuro-fuzzy inference" Proceedings of 3rd international conference on fracture and strength of solids. 1. 333-342 (1997)
• [文献書誌] Michihiko Nakagaki,Yadong Wu,Takayuki Kasai: "An averaging law in constitutive modeling for phase transforming material" Proc.of Interenational Conference on Materials and Mechanics'97. 427-428 (1997)
• [文献書誌] Yadong Wu,Michihiko Nakagaki: "An Elastoplastic constitutive modeling of particle dispsersed composite" Proc.of Interenational Conference on Materials and Mechanics'97. 57-62 (1997)
• [文献書誌] 呉亜東,中垣通彦: "微視的な応力干渉を考慮した粒子分散複合材料の非線形構成則" 計算工学講演会論文集. 12. 1175-1178 (1997)
• [文献書誌] 中垣通彦、呉亜東: "粒子分散構成則を用いた傾斜機能材料の材料設計" 第39回構造強度に関する講演会講演集. 69-72 (1997)
• [文献書誌] 中垣通彦、呉亜東: "繊維分散強化複合材料モデルと構成則" 産学官共同研究中間成果発表フォーラム予稿集. 32-36 (1997)
• [文献書誌] 中垣通彦、呉亜東、田中慎也: "粒子分散複合材料の平均熱伝導率" 第35回高温強度シンポジウム講演会. 45-49 (1997)
• [文献書誌] Michihiko Nakagaki,Yadong Wu,Takayuki Kasai: "Averaging law in constitututive modeling for phase transforming alloy and its effects on material behavior" Proc.of Plasticitity '97:6th International Symposium on Plasticity and Its Current Applications. 167-168 (1997)
• [文献書誌] Michihiko Nakagaki,Yadong Wu: "Elastoplastic modeling for composite with ellipsoidal inhomogeneities" Proceedings of 4th International Conference on Composites Engineering. 707-708 (1997)
• [文献書誌] 呉亜東、中垣通彦: "ウィスカ分散複合材料の構成則" 日本機械学会75期通常総会講演会. 323-324 (1998)
• [文献書誌] 呉亜東,中垣通彦: "粒子分散構造をもつ複合材料の平均化構成則" 第47回応用力学連合講演会予稿集. 393-394 (1998)
• [文献書誌] 呉亜東,中垣通彦: "等価介在物理論による粒子分散複合材料の構成式" 第27回FRPシンポジウム講演会. 129-132 (1998)