研究概要 |
AI合金の疲労挙動に及ぼす実験室雰囲気の影響を明らかにするため、温度(20,35℃)および相対湿度(40,80%)を組み合わせて変えた大気中において、時効硬化AI合金7075-T6平滑材の回転曲げ疲労試験を行った。そして、各雰囲気中の基本S-N曲線を求めるとともに、レプリカ法による表面の疲労被害を連続観察した。また、一部S35C焼ならし材についても同様の実験を行い、7075-T6との比較を行った。得られた主な結論を以下に示す。 1.基本S-N曲線には雰囲気の違いが認められ、相対湿度が大きい方が疲労寿命および時間疲労限は小さい。一方、温度の影響はほとんど認められない。これはS35Cで得られた雰囲気の影響(温度の影響が大きく、湿度の影響はあまり認められない)と異なる。 2.き裂は繰返しのごく初期に結晶粒内に点発生的に発生し、繰り返しとともにせん断形の伝ぱ形態を示すが、その後、引張り形で伝ぱ拡大する。また、き裂の挙動に雰囲気による本質的違いは認められない。 3.雰囲気が7075-T6材の疲労過程のどの段階に大きく影響するかを調べたところ、き裂の発生寿命および微視的き裂の伝ぱ寿命に及ぼす影響が傾向的に大きいことが明らかになった。しかしながら、データのばらつきが大きく定量的な検討はできなかった。次年度は統計的疲労試験を行い、この点を定量的に明らかにする計画である(S35Cについては、予備実験として前年度行った結果と本年度追加実験を行った結果から、雰囲気の影響を疲労の各段階ごとに定量化できた)。 4.破面をSEMにて観察し、疲労の段階によりファセット・ストライエーションを伴う破面が観察された。しかしながら、雰囲気と破面の関係は認められない。
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