研究概要 |
Al合金7075-T6および比較のためS35C焼ならし材を用いて、実験室内の温度と湿度を制御した環境下で疲労試験を行い、3つの実験室大気条件(20℃・湿潤(20-moist),35℃・湿潤(35-moist),35℃・乾燥(35-dry))下の温度・湿度の変動が疲労挙動に及ぼす影響を検討した。 (1) S-N曲線:S35Cでは、20-moistが35-moistおよび35-dryより疲労寿命が大きい。湿度の影響はあまり大きくない。一方、7075-T6では、20-dryが20-moistおよび35-moistより疲労寿命が湿度に影響され大きいが、温度の影響はあまり顕著でない。 (2) き裂発生寿命に及ぼす大気の影響:S35Cでは、き裂発生寿命は温度の影響を受け温度の低い方がき裂発生寿命は大きいが、湿度の影響は認められない。一方、7075-T6では乾燥大気中のき裂発生寿命が湿潤大気中より著しく大きい。また、温度の影響はあまり認められない。 (3) き裂の伝ぱ挙動に及ぼす大気の影響:S35C、7075-T6いずれも微視的き裂の伝ぱ挙動は湿度の影響を受け、乾燥大気中の伝ぱ速度が湿潤大気中より大きい。長いき裂の伝ぱは湿度の影響をほとんど受けない。 (4) 疲労挙動の分布特性と統計的性質:疲労寿命・き裂発生および伝ぱ寿命は3母数ワイブル分布で整理でき、き裂伝ぱ速度分布は対数正規分布で整理できる。S35Cでは、き裂伝ぱ速度の変動係数CVは、き裂長さの減少と共に増加するが、き裂が0.3mmを越えれば0.3に漸近する。一方、7075-T6では、CVに環境や疲労各段階の違いは認められない。 (5) 両材の疲労挙動に及ぼす実験室大気の影響に差が生じた理由は不明である。疲労き裂の発生・進展挙動は繰返し応力下の転位運動や微視的塑性変形に支配され、今後この観点から温度・湿度の影響に対する物理的意味の解明を行う必要がある。
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