1.平成9年度の成果 本年度は、Ni基超合金インコネル718の高温(室温〜600℃)における基本的な疲労特性を明らかにすることを目的とし、き裂発生と初期伝ぱに及ぼす高温酸化および切欠感度を調べ、以下の結果を得た。 (1)疲労き裂の発生および初期伝ぱに及ぼす高温環境の影響 疲労き裂は高温になる程早期に発生するが、数十ミクロン程度の微小なき裂の伝ぱ過程では高温酸化に起因した顕著なき裂停留現象が起こる。 (2)高温疲労における切欠感度と切欠材の強度評価法 平滑材の疲労限度は、約20ミクロンの微視的き裂の伝ぱ限界で決まる。このため上記(1)で述べた高温による微視的き裂の伝ぱ抑制効果に起因して疲労限度は室温より高温の方が高くなる。これに対して切欠材の場合、き裂発生に対する疲労限度は高温によりわずかに上昇するのみで、とくにき裂伝ぱ限界に対する疲労限度は高温側で逆に低下する傾向がある。しかしいずれの温度でも、疲労限度は線形切欠力学で評価できる。そして線形切欠力学に基づき鉄鋼材料と比較した場合、本合金は高い静強度を有する割に室温の切欠感度は低く、温度上昇に伴い敏感になる傾向があることが明らかになった。 2.今後の課題(平成9年度の結果から生じた課題) 高温により疲労き裂は発生しやすくなることが明らかにされたが、加熱時間によっては厚く硬い高温酸化膜が形成され、それによりき裂発生は影響される可能性があるので酸化状態とき裂発生の関係を調べる必要がある。さらに高温でのき裂の初期伝ぱにおける停留現象は変動荷重下での疲労強度評価で重要になる。従って、当初予定した次年度の研究計画に加えて上記内容も検討する予定である。
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