高温環境下で使用されるセラミック材料にとって、定常・非定常の熱流束に伴い生じる熱応力による破壊、特に熱衝撃破壊を克服することが重要な課題である。熱衝撃破壊を理解するためには熱応力の導出および微視破壊過程の評価の2つが重要となる。本研究では熱衝撃下のセラミックスにおける微視破壊過程の評価に高感度で速度応答に優れたAE法を利用することを目的に、平成9年度(研究期間初年度)に熱衝撃破壊の際のAE計測が可能な装置を新たに開発した。試験片は厚さ(0.5mm)が直径(20mm)に対して十分に小さな円盤とし、赤外線加熱炉で所定の温度に加熱した後直径4mmの金属ピンを中央に接触させて急冷した。試験片表面の温度をスポットタイプの赤外線放射温度計で測定したところ、表裏両面での温度差がほとんどなかったことから試験片内の温度分布さらには熱応力分布が2次元であることが確認された。そこで、熱応力分布は計測した温度分布から解析的に算出した。なお、FEMによる熱伝導解析に基づいた数値シミュレーションによって熱応力の数値解析を行ったが実験で得られた結果とよい一致を示し、本研究の熱応力算出法の妥当性が検証されている。 熱衝撃破壊の際にAE計測を行った結果、熱応力は金属ピン接触後約3秒で最大となるが、それ以前にAEエネルギーの急増が認められた。巨視的な破壊過程をビデオシステムにより観察したところ、AEエネルギーの急増点は巨視的な主き裂の形成に対応することが確認された。これらの結果から、熱衝撃破壊過程は微視き裂の生成→微視き裂の合体による主き裂の形成→主き裂の進展→最終破壊のように進行することが確認された。以上のように熱衝撃破壊の際にAE計測を国内外で初めて成功したことにより、熱衝撃破壊のメカニズムを理解する上で重要な知見が得られたといえる。
|